2014年4月17日木曜日

モンパルナス駅のストリート・ピアノ

ブルターニュより戻りました。
先週、子猿2匹とその従兄弟1人を連れて、パリのモンパルナス駅よりTGVに乗って行ったのですよ。義理の両親とまったりの数日。やっぱり難しい人たちだわ、と再々々…確認でした。ま、それはいいか。

ところで、このモンパルナス駅のTGV待合エリアに、ちょっと前よりアップライトのピアノが置かれるようになったのは報告しましたっけ。
製造元は世界に誇るKAWAI。ふんふんふん、と同国企業の文化的貢献に少し誇らしくなってしまう。
出発までの時間つぶしに、音楽でもどうぞ、という粋な計らいです。

どんな感じかと言うと、こんな感じ・画像はコチラを見てみてください。

ブルターニュに向かった日も、中年のムシュウがジャズ風のメロディを奏でていました。音楽音痴の母猿には、ものすごく上手に聴こえますので、ピアノを習っている子猿+1を呼び寄せます。兄猿が興味津々な様子。

もう一人、アラブ系とみられる太っちょの少年も食い入るように聴いています。12歳くらいかなぁ。

ムシュウが一休みすると、「Bravo!」と拍手喝采です。本当に素晴らしかった。

そしてこの太っちょ少年が、これはチャンスと乗り出します。ムシューが「お、弾いてみるか?」と席を譲ります。

坊主、何弾くんだろう、と余り関心なく待っていると、これがすごかった。兄猿曰く、モーツァルトらしいけれど私は知らない、よく聴くメロディですごくテンポが速い曲を、びっくりの巧さで弾くのですよ。指の動きも美しくって、もう感激でした。

それまでは兄猿が少し弾きたそうなのは感じていたけれど、こんなに上手なお兄ちゃんのあとじゃぁね。

と思っていたら、お兄ちゃんが終わって、皆よりブラボーの喝采を受けているときに、
「ママ、リュック持って」
と荷物を降ろし、自らピアノに向かったのです。

兄猿、6月の発表会向けに、先生が苦労して探してくださったモーツァルトのピアノ・コンツェルト8番https://www.youtube.com/watch?v=OsyFo5zMgT4を子供用にシンプル化したものを弾かせていただけることになっていて、モーツァルトが大好きな兄猿はこのところ、暇があれば練習していました。 

うちの中古落ちの電子ピアノで練習しているし、まだ幼いので指の力が弱くて良く聴こえなかったけれど、そして「弾く」というテクニックだけに集中した表現性のない空っぽの音だったけれど、兄猿は弾いた!
お優しい観衆の方々は「ブラボー!」って拍手してくださって、兄猿ったらお辞儀もせずに恥ずかしそうに戻ってきて、「ちょっとTimid(小心)だったから巧く弾けなかった」と言い訳しながらも、嬉しそう。
ピンボケでゴメンナサイ!
なにが「小心」ですかね。とっても巧い大人と子供の後に、図々しく名乗りを上げるなんて、大胆不敵じゃない、ねぇ? 

兄猿としては、「僕だって弾ける」という、実力が見えてない故の虚栄心、「ピアノがあるなら弾きたい」という純心さ、「きれいな曲だから皆も聴きたいだろう」という自分中心ながらも少しだけ善意もある思考、「皆の前で弾いてみたい」という大胆不敵なパフォーマンス欲、などなどが混ざっていたのでしょうか。

兄猿の知らない一面、ふてぶてしさともいえるし、積極的ともいえる一面に遭遇して、びっくりした母猿でした。ちなみにちび猿からは「よくやった」と労われていてこれも笑えた。
でも、ほんとほんと、よくやったよ。

彼の後、やはりアラブ系の若者が素晴らしい腕前を披露してくださって、そのあとで先ほどの中年ムシュウと即興で連弾をすることに……。人間の指があんなに鍵盤の上を踊る、協和することに、音楽が乗り移ったかのように次々とメロディーとリズムを生み出す、その創造性に感動してしまいました。
すごいよね、人間って。

あぁ、それにしても驚いた驚いた、兄猿には、の巻でした。